アクセス

CRAFT

作る

作るイラスト

森のキツネ

「キツネは人間界と森との間に暮らす動物なんです」。
「森のキツネ」という屋号で活動する木工作家の河野さんは、目をキラキラさせてそう言います。下川町の市街地から車で15分ほど走らせた一の橋地区の一角に、河野さんの工房はあります。その裏には森への出入口が。夏ではキツネやリス、アカゲラが顔を出し、夜にはホタルの小さな光があちこち飛び回ります。冬になると、ふわふわの雪の上にはウサギやシカ、テンの足跡が残ります。人口150人くらいが暮らす小さな集落の片隅で、森にとけ込むようにたたずむ工房では、木を削る音以外にも、動物の息づかいが聞こえてきそうです。

「森のキツネ」は、下川の森に自生している広葉樹のナラやハルニレ、カエデやクルミなどを使ったものづくりを行っています。触れると頬づりしたくなるような木の質感の家具たちは、どんな年齢層の人の部屋にも、するりと馴染むやわらかい雰囲気。まあるい「ハルニレテーブル」は、足の長さを選ぶことができます。ライフスタイルの変化や好みに合わせて使い方を変えられるよう、調整可能なデザインになりました。ハルニレの本棚も可動式のワゴンがついて、棚板の高さも変えられます。

「木にも、性格があるんです」と河野さん。木を削ったり、組み立てたり、表面に触れたりすると同じ樹種でも“性格”がまったく違うことがあるそう。なかなか思うように形を取らせてもらえない頑固な木や、加工する前から手に吸いつくようなやさしい木などなど……。パッと見ただけでは同じでも、じっくり向き合ってみると木の声が聞こえてくる。常に木に触れているからこそ、ちょっとした微細な違いも、個性として読み取れるのです。ちなみに、ハルニレは女性的な樹種。アイヌの伝説で、美しいハルニレ姫に見惚れた雷神が、雲から足を踏み外して地上に落ち、身ごもったハルニレ姫からアイヌの祖先が産まれた──という物語があるそう。こうした植物にまつわるアイヌの伝説からも、木々の性格は読み解けそうです。

さまざまな木の個性をすくい取り、対話をしながら作られた「森のキツネ」の家具たちは、土に根を張っていたときの様子をそのまま切り取って家具にしたような木工作品ばかり。ふだんはインターネット上で見ることができ、イベント出展も北海道を中心に日本各地で行なっているため、手に取って触れることもできます。インスタグラムなどで出展の告知は随時行なっていますのでのぞいてみてください。ちなみに、タイミングが合えば工房での注文も可能。ただし、動物と人間の世界を行き来していますので、もし工房を留守にしていても、怒らないでくださいね。

※注文からお時間をいただくことがございます。